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AIによって書かれた文章の文学性。
真実か虚構か? AIは吾輩か?
ChatGPTで芥川賞。
芥川賞を受賞した作品に、生成AIであるChatGPTの文章が使われていたという。
すでに美術作品で、Jason M. Allen(ジェイソン・M・アレン)さんが画像生成AIのMidjourneyを使い、アメリカのコロラド・ステート・フェアの「デジタル アート / デジタル操作写真」部門で1位を獲得したという例があったので、遅かれ早かれだった。
画像出典:Wikipedia
Art by:Jason M. Allen
The Times They Are A-Changin’ – 時代は変わる
時代の変わりを感じられる。
生成AIは間違った回答や文章を書き出すことがあるが、新聞やテレビと違い、小説の場合はフィクションでも大きな問題とはならない。
むしろ小説の世界では、フィクションの方がずっと多い。
Photo by brenkee
九段理江さんとChatGPTによる、東京都同情塔。
95%の九段理江さんと、5%のChatGPT。
33歳の若さで芥川賞。
九段理江さんは現在33歳とのことなので、文学の世界では「若手」に入るだろう。ChatGPT使用についての抵抗感は少なかった、もしくは積極的だったと思われる。
複数のメディアで、「5%くらいは生成AIの文章をそのまま使っているところがある」と、正直な本人談が出ている。
Photo by EliFrancis
The Times They Are A-Changin’ – 時代は変わる
将棋の世界では、人間がAIに勝つことはほとんど不可能だそうだ。羽生善治さんでも藤井聡太さんでも勝てないとのこと。
「九段」という名字も珍しく、将棋の最高位である「九段」と同じ文字で、不思議な感じもする。
宮沢賢治の詩の一節に「紙と硬質インクをつらね」という文章があるが、今この文章は「ブラウザにキーボードで」書かれている。
そのような時代に、小説家である九段理江さんがChatGPTを使用したのは必然だったのかもしれない。
Time Out of Mind – 心から離れた時間
逆にもし「生成AI同情塔」の世界観や時間軸、言語処理やマインドがあれば、「ChatGPTさんは5%の文章生成で人間界の芥川賞を受賞した」と賑わっているかもしれない。
金子みすゞの「大漁」や、ジャガー-リチャーズの「Sympathy for the Devil」のように、視点が変わると言葉の意味が反対のようになる。
Love and Theft – 愛と盗み
小説の中の「東京都同情塔」は、近未来の刑務所のような建築物らしい。
実社会でも、普通に愛情を注がれた環境下で育った場合と、虐待や貧困の環境下で育った場合では、窃盗などの犯罪を犯してしまう確率が違う。
客観的に見て、数字で見て、違うのだ。
なので場合によっては、同情的な対処をすることも必要となっている。
芥川龍之介本人の「羅生門」も、そんな感じの印象が残っている。
ノーベル文学賞を受賞した、ボブ・ディランさん。
歌詞は文学か?
シンガーソングライターがノーベル文学賞。
シンガーソングライターで有名なボブ・ディランさんは、2016年にノーベル文学賞を受賞し、賛否両論となった。
文学者への賞であるノーベル文学賞を、歌手であるボブ・ディランへ与えるのはどうか、という趣旨だった。
1990年代からノーベル文学賞候補だった。
ボブ・ディランは、遅くても1990年代からノーベル文学賞候補と言われていた。
このことは一般的には知られていなかったので、これも賛否の大きな原因となったと思われる。
もし知られていれば、「突然受賞した」というわけではなく、「本当に受賞した」という感じになっただろう。
Time Out of Mind – 心から離れた時間
ボブ・ディランという人は稀有なミュージシャンであり、1960年代が全盛期だったのにも関わらず、その約30年後の1997年に発表したアルバム「Time Out of Mind」でまたグラミー賞を受賞した。
ノーベル賞の候補者は公的には非公開だそうだが、そのグラミー賞を受賞したアルバムのライナーノーツの中で、「ボブ・ディランがノーベル文学賞の候補となっている」ということが、菅野ヘッケルさんにより執筆、もしくは翻訳がされていた。
なので遅くても1990年代後半から、ボブ・ディランならいつか受賞してもおかしくないという目線はあり続け、約20年後に受賞にいたっている。
Bob Dylan Mural, South 5th Street, Minneapolis, MN, USA
Photo by weston m
劇作家と吟遊詩人と、音楽と小説。
当初ディランとノーベル財団は連絡が着かない状況であり、授賞式にも出席しなかった。
それでも受賞に当たって、きっちりと文章を書いている。
その中で、シェイクスピアについてや、ホメロスの言葉などを引用している。
シェイクスピアは現代では「英文学の作家」のイメージがあるが、実際の活動期だったルネサンス期では「劇作家」だった。
ホメロスは古代ギリシャの「吟遊詩人」だったとして有名。
劇作家や詩人がノーベル文学賞を受賞した例は何度かあり、小説よりも長い歴史もある。
Love and Theft – 愛と盗み
劇作家や吟遊詩人というと音楽の要素が感じられるが、小説家は言葉に合わせて楽器を弾いたりせず、歌ったりもしない。
村上春樹さんは音楽好きだと言われているが、曲を付けて文章を発表したりしない。
ボブ・ディランは多くのミュージシャンのように、発表した曲をその曲調のまま歌わない。
なのでこの2人には、「言葉をより重視する」という共通点がある。
また両者とも、たびたび他者の文章やタイトル、ボブ・ディランはメロディーまで拝借しているが、愛や敬意が伝わっているためなのか、喧嘩や訴訟になったりはしていない。
文字を嫌ったとされるソクラテスの言葉。
文字は真実を伝えられるか?
古代ギリシャのプシュケー。
吟遊詩人だったというホメロスと同様に(時期はかぶっていない)、古代ギリシャ、今から2,000年以上も前の時代のソクラテスは、「人との対話」を重視し、「文字」を嫌ったと言われている。
結果的にソクラテスは「本」どころか、「文字」や「文章」すらも書かなかったとされている。
Photo by nonbirinonko
Time Out of Mind – 心から離れた時間
もし弟子のプラトンやクセノフォンたちが古代の「文字」によって「本」を残さなければ、ソクラテスの「無知の知」という考えや「善く生きる」といった信念や言動も後世には伝わらなかった。
彼らの言葉が後に翻訳され、さらに印刷やデジタル化がされ、本やスマホなどに書かれた現代の「文字」で、人々が読むことになっている。
それでも本当の意味での「ソクラテスの思想」は、ソクラテスと実際に「対話」をしたことがある者しか知らない。
Love and Theft – 愛と盗み
対話中のソクラテスの声は残っておらず、書物も本人直接の言葉ではないため、意図とは違う意味だったり、話が美化されたり、尾ひれが付いている可能性が考えられる。
そのため、以下のような場面が生まれてくると思われる。
- 事実ではなく、フィクションでも広がる。
- 人間であれ猫であれAIであれ、伝える者がいれば伝わる。
- その結果、情報の取捨選択、情報処理能力が問われる。
本の中でソクラテスが言うように、ただ生きるのではなく、善く生きる。これは劇的なストーリー性だけでなく、ChatGPTなどの生成AIでもよく問われる倫理の問題にもつながる。
必要なのは、
ソクラテスのダイモニオン、なのかもしれない。
宮沢賢治がいう有機交流電燈や因果交流電燈、なのかもしれない。
ボブ・ディランが歌う風の中、なのかもしれない。
Appleの未来のOSなのかもしれないし、OpenAIの未来のAGIなのかもしれない。
Noel Gallagher @ Mexico City, April 10th, 2012
Photo by Jose Francisco Del Valle Mojica
Don’t Look Back and Don’t Look Back in Anger – 振り返らないでと、怒って振り返らないで
たぶん答えは誰もわからないが、歴史から学ぶとすると、何かをつなぐための「倫理」というのは必要だろう。
もし現代まで残ったソクラテス像が正しいもの、またはソクラテスさん自身が生きていれば、AIが書いた文章を評価することはおそらくなかった。
もしボブ・ディランがシンガーソングライターではなく、純粋な作詞家だったなら、ノーベル文学賞を受賞することもおそらくなかった。
と同じように、
プラトンさんがソクラテスを本に書かなければ、
ジョーン・バエズさんがディランの曲を歌わなければ、
というある意味、小説のような世界観が生まれてくる。
Photo by un-perfekt
以上、参考になれば幸いです。
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