絵を描く子供は、比較的運動が苦手となる。
過去を振り返ると、保育園や小学生の頃、絵を描いていたのはいわゆる「運動神経がないひと」だった。逆に言うと、「運動神経があるひと」、例えば同学年で一番足が速いひとは、絵を描いてはいなかった。
神経回路が違うのだ。絵を描くために、足を速く動かす回路は必須ではないように、スポーツの練習に絵を描くことは必須ではない。高校や大学の頃はそれぞれ別の地域で、同級生の面々もそれぞれ違っていたが、やはり同様の光景だった。
これは個人的な風景、現象だったのだろうか?
(※どちらが素晴らしいとかということではなく、先天的に苦手得意、向き不向き、があるということだ。普通の親なら簡単に見極められることであり、その後の人生のアドバイスもしやすい。)
少し、客観視してみよう。
過去に住んでいた複数の街で、絵を描く少年の集団とすれ違ったことはあっただろうか?
一度もない。
では野球少年の集団とすれ違ったことはあっただろうか?
それは何度もある。
次に、ネットで「小学生 将来の夢」と検索してみる。
アンケートを実施した団体による差異はあるが、男子ではいまだにスポーツ選手が上位にあがっている。
近年、YouTuberやゲーム関連がランクインしてきているが、全体的に見ると普通にスポーツ選手という結果が出ている。
デザイナーやイラストレーターは、スポーツ選手の下にランクインしている。
逆に、考えてみる。
プロスポーツ選手が引退後、絵を描く職業に就いた例はあるだろうか?少なくとも有名な選手では、聞いたことがない。あっても副業でのプロデュース止まりだ。プロスポーツ選手がデザイナーに転職したり、絵の展示会を開いてスポーツ以上に話題になったということも聞いたことがない。スポーツの経験や知名度を活かしたタレント活動やYouTuberに転身した例の方が圧倒的に多い。確立されたニューロンとシナプスを大人になって再構築するのは無理があり、確立されたパブリックイメージを変えることも簡単ではない。
つまり、現代日本で生まれた小学生男子の将来の夢やなりたい職業は、まだまだスポーツ選手が人気なのだ。
ちなみに女子でも、いまだにパン屋さん・ケーキ屋さん・パティシエなどのお菓子関連と、薬剤師・看護師・保育士などの医療教育関連が多い。こちらも呼び名は変われど、昭和後期の時代から言われていた職業だ。
ということは、子供の時の夢がそのまま叶えば、現代日本社会ではスポーツ選手やスウィーツ系、医療教育系が発展することになる。
かつての子供が育ってどうなったか?
実際どうなっているだろう。日本で一番知名度があり収入が多いスポーツは野球だ。今でも毎日のように報道され、今では億単位の年俸が普通になっている。プロ野球の世界では「失われた30年」など存在せず、右肩上がりのバブルが続いている。
時々、野球人気が低下しているという報道がされることがあるが、実際のところはNPBでもMLBでも年俸は上がっている。トップ選手の年俸は約10倍にもなっている。地上波TV放送が無くなったが、放映権や入場料は確保できている。
個人的にプロ野球選手になった同級生(クラス違い)がいたが、彼は引退後も、仕事に困ってはいない。
女子の方はどうだろう?
街を見ると、都市でも田舎でも、ドラッグストアは確実に増えた。スウィーツ店も増えている。呼び名が薬屋さんからドラッグストアに、お菓子屋さんがスウィーツ屋さんになった、ということではない。
地方では道の駅、都市部ではデパ地下など、十分に目立つところにも、実店舗として増えている。ほぼ必ず、店頭には女性スタッフがいる。
子供の夢はある程度、叶っているのだ。
少なくとも野球やドラッグストアについては、まだまだ全然バブリーだ。野球選手はAIでは代替できず、ITに弱い世代の高齢化が進む社会でのドラッグストアのAI促進は、10年20年単位では現実的にはむしろ難しいだろう。
子供達がプロ野球選手や薬剤師を目指しても、それほど難しい問題ではないのだ。小さな街でもエースで4番的な人材は1人くらいは普通にいる。薬剤師も数人はいるだろう。それが毎年のように繰り返されるので、特別珍しいということではない。夢があり、20年後も求められるであろう職業だ。個の力だけではまず不可能だが、親と指導者の理解や協力があれば十分に叶う。
運動神経の良い子供に文化的なことを過度に強いたり、運動神経が良くない子供にスポーツを過度に強いたりすると、そこで道が閉ざされる。能力を潰してしまう。そういうことをしない限り、子供は夢を叶えるために自発的に努力し頑張るのだ。
ダークホース。
昭和後期でも令和初期でも一番ではないがランクインしていた職業だった「絵を描く仕事」。その中で飛び抜けたのはマンガとアニメだった。30年前以上も前の彼らは、運動神経よりもキャラクターや世界観などのデザイン脳に優れていた。
そして運動を強要されることがなく、自身のフィジカルのサポートとなる親や文化、2〜3世代前のヨーロッパでの浮世絵人気や1〜2世代前の白黒画面でのテレビアニメという確立された歴史と景色、世代の近い少年少女雑誌とも一緒に育ち、さらなるニーズとノウハウも働きカラフルな追い風となった。
それらが証明と橋渡しとなり、いまでは国際化が進み、現代日本の代表文化とも呼べるまでに成長している。
少なくとも20年前以上前からマンガは、ゲイシャやニンジャ、スシやサムライと同レベルの知名度、そして需要を得ていたので、成熟している。簡単には廃れない。
だが、それでも言われていたのだ。マンガばかり見ているとバカになる、と。
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