レオナルド・ダ・ヴィンチという名前の意味。
ヴィンチ村のレオナルド?
レオナルド・ダ・ヴィンチという名は本名ではなく、直訳では「ヴィンチ村のレオナルド」、という意味となるらしい。
なので「ダ・ヴィンチ」と言うと、「ヴィンチ村の」と言っているようなものであるという。
ただしこのことは、数十年前、20世紀の時代から言われていることだった。
レオナルド・ダ・ヴィンチの生家と言われているヴィンチ郊外アンキアーノの家。
画像出典:Wikipedia
Leonardo di ser Piero da Vinci
(レオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチ)
また、出生名は「Leonardo di ser Piero da Vinci / レオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチ」。
「ser Piero da Vinci / ヴィンチ村出身のセル・ピエーロの息子」と、「da Vinci」は名字のように含まれている。
参照:レオナルド・ダ・ヴィンチ – Wikipedia
参照: Leonardo da Vinci – Wikipedia(イタリア語)
参照:Leonardo da Vinci – Wikipedia(英語)
画像出典:Wikipedia
欧米ではレオナルド?
欧米ではレオナルドと呼ばれているという説があるが、それはちょっとあやしいかもしれない。
ヴィンチには「Da Vinci」のない「Museo Leonardiano(レオナルド博物館)」があるので、現地ではレオナルドの呼び名で落ち着いているのかもしれない。
ところがそのレオナルド博物館のWebサイトにも、「da Vinci」や「Vinci」の表記はされている。
また、他にも「Da Vinci」の名が冠されたされたものも以前から多々ある。
The Da Vinci Code(ダ・ヴィンチ・コード)
「ダ・ヴィンチ」 = 「ヴィンチ村の」であるということは、映画「The Da Vinci Code(ダ・ヴィンチ・コード)」の公開のずっと前から言われていた。
となると、欧米ではレオナルドと呼ばれている、という説では時系列的に筋が通らない。
ダ・ヴィンチ・コードはアメリカの小説家ダン・ブラウンによる2003年の作品であり、2006年に同名でロン・ハワード監督により映画化されている。
ヨーロッパのフランスを舞台に、アメリカ人のトム・ハンクスとフランス人のオドレイ・トトゥが主要人物を演じている。
映画「ダ・ヴィンチ・コード」は当初から大きな話題となり、監督も俳優もかなりの有名人なので、公開後の影響力は容易に想像できただろう。
もし当時、本当にレオナルドの呼称が定着していたのであれば、遅くても映画化の際に「The Leonardo Code(レオナルド・コード)」としなければ不自然だ。
DaVinci Resolve(ダヴィンチ・リゾルブ)
また、YouTubeでもよく使われている人気動画編集ソフトの「DaVinci Resolve(ダヴィンチ・リゾルブ)」は、オーストラリア人のグラント・ペティによりオーストラリアで設立された「Blackmagic Design Pty Ltd(ブラックマジックデザイン社)」によりリリースされている。
元々はアメリカの企業だった、da Vinci Systems(ダ・ヴィンチ・システム社)を買収して開発されているが、そのダ・ヴィンチ・システム社はダ・ヴィンチ・コードよりもさらに前に起業されており、1980年代からダ・ヴィンチの名を冠したソフトも発売している。
つまり、アメリカでもフランスでもオーストラリアでも、レオナルド・ダ・ヴィンチはずっと以前から「ダ・ヴィンチ」で通っていたことになる。
(※ヴィンチは世界的に知名度のある街ではなく、他に世界的な著名人もいない。とても美しい街。)
ミケランジェロとラファエロはファーストネームだが、ヴェロッキオやペルジーノは違う。
レオナルド・ダ・ヴィンチとともに、いわゆるルネサンス3大巨匠と呼ばれている他の2人、ミケランジェロ・ブオナローティとラファエロ・サンティは、ファーストネームで呼ばれている。
この2人はレオナルド・ダ・ヴィンチよりも早くに高い評価を得ていたため、その分ファーストネームで浸透するのも速かったのかもしれない。
ラファエロ
画像出典:Wikipedia
ミケランジェロ
画像出典:Wikipedia
ところがそれ以前の時代に、ラファエロが生まれる前、世に出る前に、レオナルド・ダ・ヴィンチが弟子入りしたアンドレア・デル・ヴェロッキオは、ファーストネームの「アンドレア」ではなく「ヴェロッキオ」と呼ばれている。
ラストネーム、ファミリーネームは「Cioni(チオーニ)」であり、ヴェロッキオはあだ名だそうだ。
ヴェロッキオ
画像出典:Wikipedia
同じくヴェロッキオの工房で働き、後にラファエロの師でもあったと言われるペルジーノは、ダ・ヴィンチと同じように出身地由来の「ペルージャ人」という意味であり、本名は「Vannucci(ヴァンヌッチ)」であるという。
ペルジーノ
画像出典:Wikipedia
また、ヴェロッキオと親交があった「ヴィーナスの誕生」で有名なサンドロ・ボッティチェリも、ファーストネームではなく「ボッティチェリ」と呼ばれ、これも本名のFilipepi(フィリペーピ)ではなく、あだ名だ。
ボッティチェリ
画像出典:Wikipedia
つまり当時のヴェロッキオ工房の周りでは、あだ名を使うのは普通のことだったと思われる。
似たような例として…
- 相撲界では、出身地にあやかった四股名の力士たちがいる。
- 野球界のジョージ・ハーマン・ルースは、「ベーブ・ルース」と呼ばれている。(イタリア語でバンビーノとも。)
- 音楽界のラッパーたちは、ほとんどが本名ではない。
- 千葉や石川、香川など、地名でも人名でも使われている名や地名性があったり、道産子や江戸っ子という呼び名もある。
- 日本でもヨーロッパでも、名字(姓)自体がない時代もあり、名に住んでいる地名を足して姓のように使うことがあった。
ということもある。
ペルージャ人のピエトロ・ヴァンヌッチが「ペルジーノ」と呼ばれているように、ヴィンチ村のレオナルドが「ダ・ヴィンチ」と呼ばれていたとしても、特に不思議ではない。
欧米のWikipedia。
ちなみに英語版のウィキペディアをチェックしてみると、ミケランジェロのページのタイトルは「Michelangelo」、ラファエロは「Raphael」とファーストネームだが、レオナルド・ダ・ヴィンチは「Leonardo」ではなく「Leonardo da Vinci」となっている。
本国イタリア語版のウィキペディアでは、3人とも性と名、両方の記載となっている。
ペルジーノの場合はイタリア語版でも、あだ名のペルージャ人「Perugino」である。
(※ペルージャにはサッカークラブもあるので街としても有名。ダ・ヴィンチの呼称がレオナルドになるのであれば、ペルジーノの呼称もピエトロとなる流れとなるが、現地ではすでに一人の画家のあだ名、愛称として定着しているのではないだろうか。)
レオナルドは同名が多いので、なかなかややこしい感じがあり、すでに映画やソフトなどで世界的にもダ・ヴィンチという名前が広がっていることをも踏まえると、さらにややこしい状態となる可能性がある。
なので「欧米ではレオナルドと呼ばれている」という説は、やはりちょっとあやしい。おそらく「レオナルドと呼ぼうとしている最中」のような状態だろう。
「ダ・ヴィンチ」と呼ぶのは間違いなのだろうか?
機会があったときに知り合いの外国人に聞いてみると良いと思う。
もし学校のテストで、「モナ・リザを描いたのは誰?」という問題があった場合、「ダ・ヴィンチ」と書いてバツをつけられてもかわいそうだ。
Acquista cosa nella tua gioventù che ristori il danno della tua vecchiezza. E se tu intendi la vecchiezza aver per suo cibo la sapienza, adoprati in tal modo in gioventù, che a tal vecchiezza non manchi il nutrimento.
老いてからの欠乏を補うのに十分なものを青年時代に獲得しておけ。老年が食物として必要なのは「知恵」である。そのことを知る者は(知恵の)栄養不足にならぬよう、若いうちに努力せよ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ。
画像出典:Wikipedia
Photo by moshehar
以上、参考になれば幸いです。
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